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犬が眠った日

研究分野は社会学・インターネット上の表現活動。その関係の記事多し

アスキーアートにおける「創作の場」としての「個人サイト」と「コミュニティサイト」

AA

このエントリーの概要

 初めに、私が思う「個人サイト」と「コミュニティサイト」の一般的な性質について書く。その後、アスキーアートの発表では、「個人サイト」と「コミュニティサイト」どういう位置付けだったかを、その歴史を踏まえて書く。最後に、自分が思う、「個人サイト」と「コミュニティサイト」の今後について。

「個人サイト」と「コミュニティサイト」について

 上の記事では、最近の表現発表(イラストや写真、音楽、文章)の場所が、個人サイトから「pixiv」や「myspace」、「flickr」、「youtube」に取って代わってきていることを述べている。これは、表現発表の場が「個人サイト」から「コミュニティサイト」へ中心が移ってきている、とまとめることができるだろう。

 「個人サイト」と「コミュニティサイト」の違いは、後者の記事にあるようにその「繋がり」のしやすさにある。「pixiv」のトップページ上には、「みんなの新着イラスト」、「デイリーランキング」、「ウィークリーランキング」、「マンスリーランキング」、「注目のタグ」、「お気に入りユーザーの新着イラスト」、「お気に入りユーザーへのリンク」という項目があり、そのイラストも一緒に乗っている。これによって、他の参加ユーザーの作品が容易に目に入る・見に行けるようになっている(黄色の部分)。また、「お気に入りユーザー」では誰に登録されたかが分かり、コメントをすれば名前の部分が自身のプロフィールへのリンクになる。

 ちなみに、その「繋がり」は場所的な距離とはあまり関係がない。例えば、同じレンタルサーバーを借りている「個人サイト」があったとしても(同じハードディスク上に2つのサイトデータがあったとしても)、ただそれだけでは、そこに「繋がり」は存在しない。「繋がり」を作る(作ってしまう)仕組みが存在して、初めて「繋がり」は生まれるのである。*1

アスキーアート」における「個人サイト」と「コミュニティサイト」の歴史

 ここで、「アスキーアート(テキストアート)」の事例を考えてみる。2ちゃんねる系の掲示板という「コミュニティサイト」を発表場所の中心としたアスキーアートは、他の表現発表より早く「個人サイトからコミュニティサイトへ」の流れに乗った*2例である。そのことから、他の表現発表の今後についても分かるかもしれない(以下の内容は、主に卒論で調べたこと)。

パソコン通信時代

 パソコン画面上で作ると言う意味でのアスキーアートは、一行で表される「顔文字」をその直接の起源とするならば、初めから掲示板という「コミュニティサイト」で始まった。カーネギー・メロン大学のScott Fahlman氏が、その産みの親である*3。また、日本において一般的な縦の顔文字「(^-^)」は、誰が作ったかは諸説あるが*4、1985〜6年頃にパソコン通信上で生まれたことは共通している。

 その後、この顔文字はパソコン通信上で人気をはくす。自身もパソコン通信上でアスキーアートを書いていた細馬宏通*5によれば、「ニフティサーブ」という商用パソコン通信では、開設年である1987年には縦型顔文字の使用が散見され、1987年〜1988年の半ばには「いくつかのフォーラムでは、新しい顔文字を次々と開発して、チャットで見せあうなどして表現を競い合った形跡がある」という。そして、1988年の中ごろには「縦型文字顔が文書の中の表情記号として爆発的に使われ始めた」。細馬は、「ニフティサーブ」内で顔文字が定着しだしたのは89年としている*6

 このパソコン通信上においては、一行の顔文字だけでなく、現在のアスキーアートと同様の数行に渡る顔文字も作られる。93年に発売された『パソコン通信 フェイスマークガイド』(森田慶子・柴崎忠生、ビレッジセンター出版局)では、実際にそのようなアスキーアートを載せている。

インターネット時代

 さて、このようにパソコン通信上の掲示板やチャットというある種の「コミュニティサイト」で人気をはくしたアスキーアートは、95〜96年に起こったパソコン通信からインターネットへの大移動の中で発表の場所を変えていく。

 私は、ここで発表場所に2つの分かれ道ができたと考える。1つは、アスキーアートを「個人サイト」で発表するやり方であり、もう一つは、パソコン通信と同様に掲示板という名の「コミュニティサイト」で発表するやり方である。

 前者の「個人サイト」発表の代表格としは、ライターの絵文字師京太こと平戸京子氏*7がいる。平戸氏は96年頃からサイトで「テキストアート」*8を作っており、書籍「絵文字名人―すべてのパソコンに入っている文字や、記号でできる」の製作にも携わっている*9。その他にも「テキストアート」で検索すれば、90年代後半頃に作られたこれらの個人サイトを数多く見ることができる。

 そして、平戸氏本人がそうであるのだが、現在このアスキーアートの個人サイトの流れは、ケータイ電話の方に受けつがれているように感じる[要検証]2ちゃんねるのAAと違い、この主の個人サイトでは、パソコン通信から続く「等幅フォント」で作られた「テキストアート」が多い。そのことが、同じ「等幅フォント」である携帯と親和性を持ったのではないかと思う。

 一方の「コミュニティサイト」(掲示板)は、「あやしいわーるど(1996年)」、「あめぞう(1998年)」、「2ちゃんねる(1999)」*10とその中心を移してきた。アスキーアートもそれに伴って発表場所を変える。その際、「オマエモナー」や「ギコ」などの文化が伝えられている*11。現在は、2ちゃんねるのAA系の板やガイドライン板、その他各種のスレなどでAAの製作発表を見ることができる。

 なお、2ちゃんねる系のアスキーアート(12ptのMS Pゴシック、行間2px)を発表している個人サイトは多くある*12。ただし、2ちゃんねるに貼った作品のまとめサイトという感が強いように感じる[要検証]2ちゃんねるで見たことが無い人としては、「ERROR-Webspace」の方がいた(他にも個人サイト限定の人がいたんだけど、サイトが分からない)。

今後の「個人サイト」と「コミュニティサイト」について

 はじめの記事二つの記事の主張である、「今後は『個人サイト』より『コミュニティサイト』が主な舞台となるに」、私も同意する。
 個人サイトでAAを発表するより、2chでやったほうがアクセスは多いだろう。個人サイトに簡易掲示板を付けるより、2chの方が反応はもらえるだろう。そういう思いが自分にもある。
 2ちゃんねるでのAA発表では、自分の作品のまとめができなかったが、「pixiv」ではそれも可能となっている。ブログのように様々なデザインテンプレートを提供するようになれば、自分のサイトを着飾る欲求も満たされるだろう。
 「総表現社会」のなかで、「自身で作る」という意味の「DIY精神」が論じられることもある*13。その一方で、直接的に表現活動には関係のない部分は、「自身で作らない」ということが起こっているのだろうかと、ふと思った。

*1:その意味では、ユーザー同士の繋がりを作ることを積極的に行っている「はてなダイアリー」も、ブログではあるがコミュニティサイトの1つであると思う。

*2:というより、顔文字を含めるのならば、初めから「コミュニティサイト」が中心であったけれども

*3:[http://research.microsoft.com/~mbj/Smiley/Smiley.html:title] / [http://web.archive.org/web/20020921060642/http://www.zdnet.co.jp/news/0209/19/xert_smile.html:title] / [http://wiredvision.jp/news/200810/2008100121.html:title]

*4:[http://staff.aist.go.jp/k.harigaya/doc/kao_his.html:title]

*5:[http://homepage3.nifty.com/elevator/oldies/kyo/index.html:title]

*6:細馬宏通,1993,「当世文字顔事情」『朝日科学』53(10):120-122.

*7:本論とは関係ないが、2ちゃんねる管理人ひろゆきの「あめぞう」時代のログを探っていたら、次のような書き込みを見つけた。本人かどうかの裏は取っていない。

38 投稿者:ひろゆき 投稿日:99年04月30日(金)11時21分32秒
うひょーーー。京太さんに紹介されてるじゃん。。いやぁー情報早いね。。
絵文字職人に紹介されれば、クサチュー語普及の道は早いね!ワクワク。
[http://csmith.jp/modules/contents/amezolog/1999/04/28/990428095609.html:title]

*8:個人サイトでは、「アスキーアート」ではなく、「テキストアート」と呼ばれることが多い。本来の意味から考えるならば、日本のこのような文字絵は「テキストアート」の方が用語として正しい。パソコン通信においても、「アスキーアート」と呼ぶのを発見できなかった。2ちゃんねるでは「アスキーアート」という呼び方が優勢であるが、その原因は不明である。アメリカでは、初めから「アスキーアート」が一般的。

*9:著者は『パソコン通信 フェイスマークガイド』と同じ、森田慶子氏である

*10:[http://f16.aaa.livedoor.jp/~stwalker/:title] / [http://history.amebbs.com/:title]

*11:この一連の流れについては、「[http://2.csx.jp/~stwalker/asciiart.htm:title]」や「[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%93%AC%E5%8F%A4%E7%8C%AB:title]」が示唆に富んでいる。共に、擬古猫氏から

*12:[http://aavideo.s11.xrea.com/:title]

*13:[asin:4860202708:title]

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