犬が眠った日

研究分野は社会学・インターネット上の表現活動。その関係の記事多し

「ロージナ茶会」で2010年夏コミ参加&夏コミ用論文の一部[8月15日 東地区 N-01b]

 今年の夏も「コミックマーケット」が開かれます。78回目を数える日本最大級の同人誌即売会であり、3日間で50万人以上が集まる即売会です。
 この「コミックマーケット78」に出すロージナ茶会の論文集に、私の論文「同人文化における『頒布』の意味解釈」を載せていただきました。私にとっては、コミケ初参加となります。

 場所:8月15日東地区N-01b

ロージナ茶会」とは

 法政大学社会学部准教授である白田秀彰先生が主催する勉強会です。ニコニコ動画に動画も上げていますので、一度見ていただければ。
 ロージナ茶会ちゃんねるパイロット版(前半)‐ニコニコ動画(9)

同人誌紹介

 今回の夏コミでは、ロージナ茶会から次の二冊をお届けします。

白田先生論文集「知識資本論」


 白田先生の論文集です。岩波文庫版のマルクス『資本論』のパロディ表紙がいい味出してます。

  1. 「知識資本論」
  2. 「知的所有論」
  3. 「教育制度批判」

の三本が収録されています。

「RTP-magazine ロージナ茶会誌2010夏号」


白田先生を含めた、ロージナ茶会メンバーの論文集です。私の論文もこの同人誌に収録されています。

  1. 白田先生のツイッター実験「ナニカ」
  2. 牢太郎氏の三部作「アニヲタは裸だ!」・「偽造批評」・「私兵論」
  3. 私の「同人文化における『頒布』の意味解釈」
  4. そして"あのひと"の小説の冒頭「Baraque」

と内容盛りだくさんです。

CM

「同人文化における『頒布』の意味解釈」について

 もう、1年以上も前になります。はんな匿名ダイアリーで「頒布ってなんだろうね?」という記事が投稿されました。ここから、同人文化における「頒布」を調べてみようと決意しました。その後資料を色々集め、できたのが今回の論文です。質問・相談に乗っていただいた、有村さんやしっぽさん、友人の山内君に感謝です。
 この論文は中間地点です。今回の論文でその意見を参考にした関係者の方々にインタビューを行い、第二弾を書きたいと思っています。

論文目次
  • はじめに
  • 1.即売会チラシの「頒布」・「販売」の使用頻度データ
    • 1-1 調査の注意点
    • 1-2 方法調査
    • 1-3 結果
    • 1-4 考察
  • 2.事例の検証
  • 3.仮説
  • 4.おわりに
  • 参考文献
「はじめに」の部分

 本論文では、同人文化において「頒布」という言葉が使用者のどのような動機の元で使われているのかを考察する。「頒布」という言葉は、似た意味を表す「販売」と比べると一般に見かける頻度は少ない。グーグルの検索結果は「販売:286,000,000、頒布:13,400,000」であり、ウィキペディアでは「販売:44,190、頒布:799」、朝日新聞・アエラ・週刊朝日のデータベースである「聞蔵2」では「販売:313,012、頒布:2,159」(すべて、2010年4月12日20時頃の検索結果)であった。だが同人文化の中では、あえて「販売」という言葉を使わず、「頒布」を使う人々がいる。同人文化の中では、「頒布」はどのように意味づけられた言葉なのだろうか。


 これを解明するため、本論文では以下のように論を進める。


 まず第一節で、「頒布」・「販売」がどれだけ使われているのかを知るために、同人即売会チラシにおける「頒布」・「販売」の使用割合を調べていく。ただ、これは統計学的に不十分な調査のため、「同人文化では、『頒布』の方が多く使われている」のような主張の直接的な根拠とはならない。ここでは、考えていくための参考としてこの割合データを扱いたい。


 第二節では、「頒布」の使用について言及した団体や個人を取り上げる。ここでは事例研究を通して、「頒布」の具体的な使用動機を見ていく。


 第三節では、これらを受けて「頒布」を使う動機の仮説を四つ提示する。


 最後に「おわりに」として、今後の課題として可能かもしれない仮説検証の方法を述べる。


 同人文化での「頒布」が、議題になることは多くない。著作権法や児童ポルノ法の方が、多く取り上げられるだろう。だが、同人文化における「お金を得る」という行為の社会的位置づけを調べるために、必要な議論であると考える。


 なお、本文章は論文としての体裁を持つため、「おわりに」以外は敬称を省略している。

参考文献