犬が眠った日

研究分野は社会学・インターネット上の表現活動。その関係の記事多し

大学新入生向け:「調べる」「読む」「書く」「考える」ためのツールたち

この記事について

この記事は、社会科学系の大学1・2年生向けに、大学での勉強で役に立つと思う本・ツールを紹介する記事である。もともとは、私が授業補助員をしている大学生向けに書いたものである。本に関しては、実際にすべて目を通してある。

これらの本・ツールを使えば、大学での勉強(集大成としての卒論)をだいぶ効率的に進められるだろう。

2017年10月28日更新

  • 電子辞書の機種を変更(以前の機種が古くなったため)
  • コトバンクの説明を更新
  • 辞書の説明を追加

調べるために

  • 値段が約1万円。一般的な電子辞書は2万~3万円代
  • 収録辞書数は12と少ないが、『スーパー大辞林』『ブリタニカ国際大百科事典(2015年1月版)』『ウィズダム英和辞典 第3版』『ウィズダム和英辞典 第2版』を収録
  • 学術書を読む、論文を書く目的では、コストパフォーマンスが一番高い
  • お金に余裕があるなら「エクスワードXD-SC5100」を

調べるために、その他のツールたち

辞書ごとに言葉の定義は異なる。そのため、なるべく多くの辞書を引いて、多面的に言葉を理解したほうがよい。

コトバンクは、信頼性の高い124の辞書を集めた無料のサイトである。国語辞典では『デジタル大辞泉』『大辞林第三版』、百科事典では『日本大百科全書(ニッポニカ)』『ブリタニカ国際大百科事典小項目事典』を全文載せている(『世界大百科事典第2版』『百科事典マイペディア』もあるが、一部分だけ)。その他にも、現代用語・人名・金融などの専門辞典を載せている。スマホアプリ版も提供中だ。

現代文キーワード読解[改訂版]
(2015 Z会出版)やことばはちからダ!現代文キーワード―入試現代文最重要キーワード20 (河合塾SERIES)(2004 河合出版)は、「評論語・抽象語」を解説した受験参考書である。大学生は評論・学術書・論文を読む機会が多い。これらの文章には、普通の国語辞典だけでは理解しにくい「評論語・抽象語」がよく使われる。上記の参考書は、図や実際に単語が使われている文章を使ってこれらの単語を説明しているので、評論・学術書・論文を読む助けになる。

読むために

  • 文章の構造把握に焦点を当てた参考書。どのような流れで文章が書かれているかを、文と図で説明している
  • 本の最初で読解テクニックを包括的に紹介。その後に、多くの解説を入れた3本の評論を基に、代表的な論の構造を紹介している
  • 9つのテーマに分けられた合計27本の評論を掲載。その評論自体が面白い。問題を解くためというよりは、それらの評論をより理解させることに力を注いでいる。それぞれのテーマの最後には、そのテーマにかかわる本を紹介している
  • どんな本を読むべきか分からない人は、まずはこれが最適

読むために、その他のツールたち

本を読むときは、辞書を手元に置いておく。単語の意味を知ることが、読解の第一歩である。

現代文の解法 読める! 解ける! ルール36(中西実 2013 Z会出版)は、『ちくま評論入門』の最初に掲載されている読解テクニックを、より優しく解説した本である。短い例文を使って「指示語」・「二項対立」・「比喩表現」などを説明しているので、手軽に読める。

わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~ (光文社新書)(西林克彦 2005 光文社)は、読解力に自信のある人にこそ読んでほしい。この本では、本当は理解が不十分にもかかわらず、文章の内容を「わかったつもり」になってしまう原因、対策を書いている。本文中には小学生向けの文章が載っているが、そのレベルの文章でさえ、私たちは「わかったつもり」になっていることに気付くだろう。

新書マップは、新書を「連想検索」で検索できるサイトである。一般的に、新書は様々なテーマを分かりやすく書いた本である。そのため、読書を始めるときは新書から手を出した方がよい。そして「連想検索」は単語ではなく文章を入力することで、関連度の高い本を提示してくれる。しかもそこから芋づる式に本を探せるので、読みたいテーマの本が見つけやすい。

書くために

  • 先生と学生の会話形式で論文の書き方を教える文章。実際に自分が教えられているように思えて、分かりやすい。また、会話を笑えるものにしているため、楽しんで読める。
  • 1つのダメ論文を各テーマごとに修正していく内容。そのため、1つの論文がだんだんよくなっていく姿が分かる。読み手もビフォー・アフターを理解しやすい。
  • 構成の作り方から、正しい論証方法、段落の作り方、読みやすい文の作り方、それぞれの分野の主な参考文献など、論文を書くのに必要な要素を網羅している。
  • 論文を書くときは、常に読み返しておくべき本

書くために、その他のツールたち

文章術の本は数多くある。ここでは、私が見てきたものでよいと思った本を紹介する。

「分かりやすい文章」の技術―読み手を説得する18のテクニック (ブルーバックス)藤沢晃治 2004 講談社)は、文書術を初めて習う人におすすめの本である。本書は、分かりやすい文章の原理とその実践方法を書いている。文書量も少なく、説明も分かりやすい。文章術の基本はこれで手に入れられる。

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)(木下是雄 1999 筑摩書房)は、論文指南本の中でもトップに居続ける『理科系の作文技術』の作者が、文系向けに書いた本である。『論文の教室』より論理立てて説明している部分に特色がある。「事実と意見の違い」の部分は、その特徴がよく分かるだろう。『論文の教室』を身につけた後は、こちらに取り掛かってもよい。

初級を教える人のための日本語文法ハンドブック(監修松岡弘 2000 スリーエーネットワーク)は、日本語教師向けの参考書である。題名通り、日本語文法を解説している。「母語が日本語の自分には必要ない」とは思わない方がいい。たとえば、「~ている」の機能を全部想像できるだろうか。形容詞が連続するときの正しい活用が分かるだろうか。日本語が母語の人々は、文法を感覚的にしか身に着けていない場合が多い。しかし論文を書くときは、感覚では自然な日本語が書けない場面が出てくる。そのさいに、この本を参照してほしい。

考えるために

  • ステレオタイプに物事を見る状態(「単眼思考」)から抜け出して、批判的に、自分の考えで物事を見る状態(「複眼思考」)になる方法を述べた本。その方法を具体的に示し、実際にその方法を使って様々な題材を分析する部分に特徴がある。
  • 内容は、1章「批判的読書法」と2章「批判的作文技法」で複眼思考の基礎トレーニングをおこない、3章「問いの立て方、展開の仕方」と4章「複眼思考法」で複眼思考の実践をおこなう構成である。
  • 「書く」や「読む」で紹介したツールで力を付けた後、この本で思考の型を身に付けて、その力を発揮してほしい。

考えるために、その他のツールたち

「考える」とは単に頭を抱えることではなく、ある特定の方法にそって論を進めていく作業である。

「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)戸田山和久 2011 NHK出版)は、科学(自然科学)がどように考える学問なのかを分かりやすく教えてくれる。「仮説」「検証」「理論」など、「科学について語る言葉」を身に付けよう。

前書で科学の基本的な考え方が分かったら、創造の方法学 (講談社現代新書)(高嶺正昭 1979 講談社)で社会科学の方法論を知ろう。人の行為を研究対象とする社会科学は、科学(自然科学)の方法がそのままでは通用しない。この本では、そんな特性に配慮しながら、社会科学を実践する方法を幅広く体系的に教えてくれる。また、この本は、著者がそれらの方法を実際に学んだときの出来事も話しながら方法を解説するという構成である。そのため、エッセイのような読み物としても楽しめるだろう。

武器としての決断思考 (星海社新書)(瀧本哲史 2011 星海社)は、ディベートで使われる考え方を説明した本である。そもそも、意見には「何であるか」を主張するだけでなく、「何をすべきか」を主張するものもある。ディベートは主に後者のタイプの意見を交わし合う行いである。本書は、その「○○をすべき」という意見をどうすれば正しく考え出せるかを細かく、具体的に教えてくれる。

印刷用版

QRコードを付けるなど、より印刷に適したレイアウトにしてあります。
【役立ちプリント】「調べる」「読む」「書く」「考える」ためのツールたち2.pdf - Google ドライブ

サンプル画像
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