Facebookで一番驚いているのは、「匿名・実名議論」ではなく、「匿名・実名問題」になったこと
ネットに関する匿名・実名議論は、昔からある。自分が持っている一番古い資料では、『科学朝日』1993年10月号177ページに匿名・実名議論が載っている。1993年という時代から分かるように、「インターネット」ではなく、「パソコン通信」の方のネットだ。ネットにおいて、匿名・実名議論は常に付きまとう議論だった。
しかし、Facebookに関する匿名・実名議論は、どうも今までとは違う。「議論」ではなく、「問題」として存在している。
今まで行われてきたのは、しょせん議論だ。実名派が議論に勝っても、匿名派を実名にさせる権限を持つわけではない。たとえ、「このwebサービスは実名必須です。匿名の場合は削除します」というルールを設けたwebサービスを私が作ったとしても、そもそもそのwebサービス自体を匿名派が無視して(そもそも無関心で)終わりだろう。関係性を簡単に切ることができるので、両者の間で「問題」は生まれない。
だがFacebookは、この実名派webサービスを無視できない(無関心でいられない)匿名派を誕生させた(「facebookの古い悪習に、僕らがNo!と言う理由 - しっぽのブログ」)。その一方で、Facebookはユーザーを退会させる権限(ユーザーとは非対称な権利)を持つ。意見が対立しても、離れられない。関係性を切ることができない中で、両者に衝突(匿名者を退会)が起きたとき、「匿名・実名議論」は「匿名・実名問題」となった。
「問題」となったことは見たことがなかったので、匿名・実名・顕名・通名・「仮名的匿名性」(いわゆる固定ハンドルネーム)・「無名的匿名性」(いわゆる「名無し」)*1をめぐる問題の、新たな局面を迎えているように感じた。
更新履歴
2011/2/24
- 「(無関心でいられない、離れたくない)」を「(無関心でいられない)」に修正
- 「掲示板」となっていたところを「BBS」に修正
- 「意見は対立しても、離れられない」を「意見が対立しても、離れられない」に修正
20011/3/5
- 「『このBBSは実名必須です。匿名の場合は削除します』というルールを設けたBBSを私が作ったとしても、そもそもBBS」にある「BBS」を「webサービス」に変更。