犬が眠った日

研究分野は社会学・インターネット上の表現活動。その関係の記事多し

コミックマーケットにおける「総参加者主義」と「非営利性」の意味と歴史

説明

以下の文章は、今度の夏コミに出す予定の論文(全文公開中)「同人文化における『頒布』の意味解釈」の参考文献となっています。
夏コミについて→「「ロージナ茶会」で、2010年夏コミ参加[8月15日 東地区 N-01b]- 犬が眠った日

コミックマーケットの総参加者主義

 即売会ではサークルが同人誌やグッツを売り、来場者がそれを金銭と交換する。もし、その場がコンビニやスーパーであった場合、サークルは利益を追求する「商人」であり、来場者は「お客様」と捉えられるはずだ。

 だが、コミックマーケットではそうではない。

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修論覚書―「インターネット上のコラボレーションの三つのレベル」

要旨

 インターネット上のコラボレーションを研究するさいには、そのコラボレーションを以下の三つのレベルで見たほうがよい。

  • 始期:「インターネット上で出会う」
  • 中期:「インターネット上で作業のためのコミュニケーションをする」
  • 終期:「インターネット上で発表する」
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インターネット上における創作コラボレーションのメカニズム(仮)

以下の文書は、修士論文の序章と1章(先行研究の説明)の途中までの文書です。進まなくて、息が苦しくなる

1.問題意識

 2010年現在、インターネット(ウェブ)上における個人の表現活動は初期より容易になっている。1993-4年前半頃の月に10万単位の接続料金(定額の専用線の場合)が掛かかり、大学生が大学のサーバーを借りて発表していた時代(ぱるばら 2005)から、月に2000円程度の常時接続環境(従来の電話線によるダイヤルアップ接続と比べた場合、理論値で約1000倍の速度)で、無料サービスを利用して音楽や動画、文章を配信できる時代となった。インターネット以前の多数の人々へ向けて表現を行う方法(同人誌・路上ライブ・学園祭ライブ・ラジオへの投稿はがき・漫画雑誌や小説の新人賞への投稿・張り紙・パソコン通信など)と比べても、現在のインターネットは多数の人々へ向けて表現することの敷居を下げている。

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ミクFES'09(夏)レポート2―僕が舞台上に見た初音ミクは、何なのか

前編:ミクFES'09(夏)レポート―僕が舞台上に見た初音ミクは、何なのか - 犬が眠った日

はじめに

 このレポートでは、次の二つを書く。

  1. 着ぐるみを着た人間をあえて「ミッキー」と思うように、観客は透明スクリーンに映った3DCGの初音ミクに対して、何かをあえて思ったのか(初音ミクの仮想性)
  2. マクロスプラス』のシャロン・アップル初音ミクの違い

この二つのテーマは、野尻抱介氏(id:nojiri_h)の「ミクFES'09のこと - 野尻blog」を参考にしている。

 もし前回からの続きとするならば、各出演者の様子を書くのが本筋だ。でも、私には描写力がない。自分に絵画の説明をさせたら、左から右へ上から下へ、各部分をそれぞれ説明しかねない。

 そのかわり、私は「僕が舞台上に見た初音ミクは、何なのか」なんていう評論か論文かよく分からないもの書くのが好きだ。だからそれを書きたいと思う。

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ミクFES'09(夏)レポート―僕が舞台上に見た初音ミクは、何なのか

 石ころが神様になるように、人はものに様々な意味づけをする。
 2300人が舞台上に見た初音ミクは、透明なスクリーンに映った3D映像(追記:正しくは3DCG)だった。でも、それ以上の何かであるんだろう。

2009年8月31日16時30分ごろ

 10時間ほど電車に乗って、東京の新木場駅に着く。人身事故の影響でだいぶ予定がずれたが、何とか無事に到着。
 駅のエレベーターを降りると、コンビニやロッテリアの中、その周辺に沢山の人がいる。屋根の下で自己紹介をしているように見えた人達や、ロッテリアの中で6人ぐらいで話している人達はオフ会なのかもしれない。

 外は台風11号の影響で強い風と雨。自分は、カッパと折り畳み傘で備える。

 コンビニでパンを買って、ライブ会場となるSTUDIO COASTへ徒歩で向かう。途中、多くの折れた傘を発見。また、ライブ会場方向から駅に向かう人がいる。グッツの購入を済ました人達が、雨宿りのために駅へ向かっているのかもしれない。

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